初期化と参照

例えば、変数に条件によって異なる値を代入したいなど、宣言時には値が決定していないため代入できない場合があります。しかし、次のサンプルコードはエラーとなってしまいます。

    static void practiceInitialize() {
        String price; // 何も代入していない
        String ticket = "通常券"; // （ここは処理時の入力で変わる想定）
        if (ticket == "通常券") {
            price = "料金は1000円です。";
        }
        if (ticket == "特別券") {
            price = "料金は500円です。";
        }
        Logger.out(price); // 「初期化されていない」というエラーとなる
    }

ここで、10行目のように「変数の値を使う・変数の値を読み取る」ことを参照すると言います。変数は宣言してから参照するまでの間に、必ず型に応じた値を代入する必要があります。

もしもticketが「通常券・特別券」以外の場合には、5・8行目の代入している行が条件分岐（if文）によって実行されなくなるため、10行目でpriceを参照した時点で何も代入されていない状態となるということを、構文解析してあらかじめ警告してくれているのです。

なお、このように実行する前にわかるエラーをコンパイルエラー／構文エラーと呼びます。

ならばとりあえずその型にあった値＝初期値を入れておこう、という対処を初期化と言います。

    static void practiceInitialize() {
        String price = ""; // 長さ0の文字列＝空文字で初期化しておく
        String ticket = "通常券"; // （ここは処理時の入力で変わる想定）
        if (ticket == "通常券") {
            price = "料金は1000円です。";
        }
        if (ticket == "特別券") {
            price = "料金は500円です。";
        }
        Logger.out(price); // コンパイルエラーが消えた
    }

今学習している「メソッドの中に定義する変数＝ローカル変数」以外の変数（クラス変数・インスタンス変数・配列の要素）では自動的に初期化が行われます。その場合に使われる初期値は型ごとに下表のようになっていますので、ローカル変数を初期化する際には同様にしましょう。

なお、ローカル変数の場合には、String型にnullではなく長さ0の文字列＝空文字を代入することも、一般的に初期化と呼ばれます。

前項のサンプルコードはエラーが解消され、ticketは「通常券・特別券」のいずれか、という暗黙のルールを守っていれば問題なさそうです。

しかし、時と共に暗黙のルールは忘れ去られます。「通常券」の名称を「当日券」に変更しただけで、「エラーなく動いているのにpriceが空っぽになる！」という問題が起きるのです。

このケースでは、次のサンプルコードのような構成を検討すべきです。

    static void practiceInitialize() {
        String price = "料金は1000円です。"; // 初期化ではなく通常時の値
        String ticket = "通常券"; // （ここは処理時の入力で変わる想定）
        if (ticket == "特別券") {
            price = "料金は500円です。";
        }
        Logger.out(price); // 特別な場合だけ値が書き換えられる
    }

その変数がいちばん取り得る値を宣言時に代入しておくことは、初期値という目的にそぐわない値の排除・条件分岐の削減・変更時の修正箇所削減などのメリットがあります。

初期値だったら（nullだったら）エラー、などの処理が必要な場合以外では、変数の宣言時にあらかじめ代入しておける値を見つけましょう。